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2018-02-08 12:49:22
お客様と担当営業の出会い。
営業担当も知らなかった物件との出会い。
それぞれに思い入れのある下町。
そのすべてを“巡り合わせ”と感じた営業の話。




「あっ!ママ、ひなちゃんのうちだ!」

物件見学に向かう車の後部座席にちょこんと座る女の子が声を上げた。私の娘より1〜2つ幼く、4歳くらいだろうか。奥様曰く、公園デビュー以来の“おともだち”であり、親しくお付き合いしているママ友の家の前を通り過ぎたようだ。

「角から3件目。シルバーのポストの家なんですけど・・・。」

奥様のその言葉に、耳を疑った。なぜなら、そのシルバーのポストの家は、私にとっても友人の家であったからだ。ひなちゃんには1〜2つ上にお姉ちゃんがいて、その子の名前を私がたずねると奥様は驚いていた。

そんな会話をしている途中に、その友人の言葉がフラッシュバックした。

− 家を探している人がいるから今度紹介する −

まさか・・・と思いつつも、会話の流れでなんとなくたずねてみた。

「その友人から不動産仲介の人を紹介されていませんでしたか?」

2〜3秒の間があったのちに、奥様が“あっ!”と閃いたかのようにスマホを操作し始めた。LINEでのやりとりを思い出した奥様は、“知り合いの不動産仲介を紹介する”で話は止まっており、不動産仲介であるハウスプラザや営業である私の名前は伝えられていないことを話してくれた。

「こんなすごい偶然あるんですね。」

そう語ったご主人ではあるが、偶然はこれだけではなかった。


この物件はお客様であるご主人が自らネットで探し出し、問い合せをしてきた。その町に売り物件が出ることはとても珍しく、広さ・間取り・環境をはじめ、お客様にとっていい条件が揃った物件だった。

その町には数多くの不動産仲介業者があり、その中でハウスプラザを選んだこと。そして、その町を担当するハウスプラザの店舗には営業が10人ほどおり、偶然にも応対することになったのが私だった。

また、私は問い合せの物件を“売約済み”と認識していたが、確認すると直近で解約と再販が決まった物件だった。お客様がこの物件を見つけたタイミングは偶然にもネットに再掲載された直後だった。

このふたつの偶然を知る由もなく、私からその事実を知ったご主人が口を開いた。

「そうなんですか。運命めいた何かを感じますね。」

そう語ると、物件見学へと向かう助手席で手渡していた資料を感慨深げに眺めていた。


お客様が探し出した物件は、私にとってもとても思い入れのある町にあった。私とその町の出会いは高校時代であり、それ以降はとても多くの時間をその町で過ごしている。
当時の仲間とは今でも付き合いは続き、飲みに行くのは決まってその町であり、お客様との共通の友人と出会ったのもその町だ。

JRと私鉄が乗り入れ、隣駅には大きな歓楽街もある。学生時代にたまり場になっていたショッピングセンターや駅ビルは再開発され姿を変えてしまったが、路地を一歩入れば袋小路があったり、大きな天神様があったりと変わらぬ下町風情が残されている。

私がこの町を好きになった一番の理由は“人”だ。お節介や世話焼きが心地よく、ドラマや映画で描かれる下町情緒が当たり前のように存在している。

「このあたりの人って、片田舎出身の私たちにもあたたかいんです。」

後部座席で娘さんをあやしながら奥様が語った。公園デビューをきっかけに下町の人柄に触れ、魅了されていったのだろう。
一度離れたことでわかった下町の良さ。助け合えるママ友がたくさんいる町で子育てを望み、新居を探しはじめたという。


駅から10分。近くには公園や病院もあり、周辺環境も整っているお客様自身が探し出した物件。到着すると早々に資料を片手に物件の確認に取り掛かった。
およそ30分くらいだっただろうか。多くを説明する必要もなく、お客様の腹はすぐに決まった。

物件の確認を終えて店へと帰る途中、助手席に座るご主人が話しかけてきた。

「娘が喘息になってしまって。今ふたりは妻の実家にいるんですよ。」

2歳を過ぎた頃に出始めた喘息の症状もだいぶ治り、保育園へ通うことに支障がなくなったこのタイミングで新居を購入する決断に至ったという。

「もうすぐパパとずっといっしょにいられるんだよ。」

ご主人の決断を汲み取った奥様は、疲れて眠っている娘さんの頭をやさしく撫でながら嬉しそうに語り掛けていた。


大好きな町の記憶がひとつ増えた


その日のうちに契約まで済ますと、今晩は久しぶりに3人だけで過ごすことができると嬉しそうに帰って行った。
その晩、共通の友人に電話を入れて確認してみると、やはり紹介する予定だった人物ということが判明した。

お客様と紹介者と私の巡り合わせからはじまり、お客様が物件に出会ったタイミング。そして、その家族の新しい生活。

私の大好きな町の記憶がまたひとつ追加された出来事だった。

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