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2017-11-07 10:44:34
【泣ける住宅購入】あなたを信用しているのでそのお値段で
“デメリット”と“メリット”を明確に説明。
一人ひとりのお客様に丁寧に向き合っていた営業が思いがけないアクシデントに直面。
それを乗り越えて契約に繋げた営業のお話です。




私はお客様に物件資料をお渡しするときに必ずその物件の“メリット”と“デメリット”を自分なりの言葉で記入する。いわば、『私オリジナル資料』だ。
売って終わりではないからこそ、“デメリット”を事前に伝えるべきで、この仕事の原理原則だと考えている。

そんなある日、お客様から物件情報の詳しい資料を持ってきて欲しいと連絡を頂いた。いつも通りに物件の『私オリジナル資料』をお客様のお宅のポストに投函しに行った。そのポストには他社から取り寄せたと思しき資料が溢れんばかりに入っていて、マイホーム探しに精力的な姿勢がうかがえた。

翌週、そのお客様から電話があった。
「家内と一緒に拝見しまして、出来れば今週中に内覧をさせていただきたいんですが。」
こうして、お客様を現地にご案内することになった。

当日、お客様をお連れして物件に向かった。
落ち着いた紳士風の旦那様と、優しそうな人柄が滲み出ている奥様。現地でご夫婦は談笑しながら丁寧に部屋を見て回っていた。頃合いを見て私は
「長い期間マイホームを探されているんですか?」
と尋ねると、旦那様が
「そうですね、もう何軒目になるかな・・・。そうそう、あなたが資料に書いてくれた物件の良い点と悪い点、とても参考になったよ。他社の資料にはそんなこと書いて無かったから、ハウスプラザさんにお願いしたくてね。」
奥様も
「そうなのよね、私たちは素人だから知らないことばかりで。デメリットを事前に知っておけて参考になりました。」
そんなお話を聞いてその日の内覧を終えた。

お客様の希望で、翌週、翌々週も別の物件の案内をし、その頃にはご夫婦との距離感もだいぶ縮まったように感じた。

ある日、物件の内覧したあと、旦那様がおもむろに
「やっぱり、いちばん最初にみた物件が気に入ったな。何よりも周辺の街並みが自分の生まれ故郷にどことなく似ていてね。懐かしい気持ちになったんだよ。」
その一言で、最初の物件でお申し込みを頂くこととなった。その場で売主様に電話を入れ確認をすると、価格の件で思いがけない事実が。
「その価格は今月限りのキャンペーン価格で、決済が翌月となると値段が戻るんですよ。」
その差は数百万円。私は頭の中が真っ白になり、心臓の音が大きくなるのを感じた。
(せっかく物件を気に入ってくださったお客様になんて説明をしよう)
上司に連絡し何とか最初の価格で買える方法はないかと頭を捻ったが成す術はない。
(正直に、そして真摯にお客様に説明するしかない。もしかしたらお怒りになるかもしれない、でも真正面から向き合おう)
覚悟を決め
「大変申し訳ありません!こちらの物件は月内決済が可能な場合の価格らしく、今からですと間に合わない為・・・誠に申し上げづらいのですがお値段が今よりも上がってしまいます。本当に申し訳ありません!」
旦那様が静かに落ち着いた口調で
「え・・・?つまりどういう事なのかな?」
私は説明し尽して、何度も頭を下げた。

旦那様が奥様に耳打ちをして何かを相談している様子だった。
そして奥様が神妙な口調で
「私、あなたのことを信用しているからそのお値段で買います」
私は驚きと信じられない気持ちで
「確かにあの物件はなんの申し分もないのですが、価格変更後の予算でしたら
他も探せますし、全力でそのお手伝いもさせていただきます!」
「ううん。主人もあの物件を気に入っているし、私もあなたからだから安心して買えるの。
だから決めましょう、って今相談したのよ。」
旦那様もそれに続いて
「あなたに色々な物件の案内をしてもらって、誠実なお人柄だと感じたんだ。そしてどの物件資料にもちゃんと“デメリット”も記入してくれていた。家をただ売りたいだけだったら、あんなに詳しく“デメリット”なんて書かないだろう?価格の事もちゃんと納得いくまで説明してくれたから何も問題はないよ。」

私は勢いよく
「本当にありがとうございます!!!」
と伝え深々と頭を下げ、長らくお辞儀をしていた。お辞儀をしたものの、顔があげられない。目頭に熱いものを感じたからだ。それは涙。
視界がぼやけている。
「すみません、ちょっと目にゴミが入ったみたいで」
とベタな誤魔化しをし、顔を上げた。
私の涙を知ってか知らずか、それとも気遣ってくれたのか、ご夫婦は笑顔で新居について語っていた。

一筋縄ではいかなかったけど、いまでも年賀状を交わす仲で、ときにはお客様のご相談に乗ることもあるくらいの関係性を築けている。