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2018-01-11 15:05:23
【泣ける住宅購入】つたない新人営業の私にお客様を紹介したお客様
つたない接客をしてしまった新人営業。
営業としての成長を見守り続けたお客様から知人を紹介してもらうまでの人間関係を作り上げた営業のお話。




3月になろうとする頃、桜の木が延々と植えられた小さな緑道沿いにある物件の現地販売を担当していた。
私の取り柄でもある人懐っこさや愛嬌のよさを感じたご近所の方が教えてくれた。

「散った桜の白い花びらが、川や一本道のように続くの。そこを散歩するのが毎年楽しみ。」

一年でわずか数日しか体験できないというその光景は、住民だから楽しめる特権だ。

“桜が満開になるまでに契約まとめよう”

そう心の中で決めて現場に通っていた頃、30代後半のご夫婦がやってきた。
近所に勤め先がある奥様には土地勘があって、その環境の素晴らしさで会話が盛り上がった。

完成間近だった物件の二階にあるバルコニーへお客様を案内した。
緑道を指さしながら眺めるご夫婦。お客様はこの物件をとても気に入り、“私にとって2組目のお客様になってくれる”という思いが高まった。


数日後、資金計画の打ち合わせをしている時に小さな問題が起こった。
お客様に非がなく、私が無知だったことと拙い応対が原因だった。

“車のローンが残っており、住宅ローンを組むにあたり支障が出る”

こんなケースはよくあることで営業を数年経験した今の自分なら対処方法も知っている。
しかし、2件目の契約を目の前にした新人営業には、何をどのようにどう処理すればいいのかわからなかった。

ローンの残債を上司に相談して、手順や方法など教えられたことをそのままお客様に伝えていた。
しかし、子供のお遣いみたいなもので、私はお客様や上司の言っていることがほとんど理解できていなかった。

自分が理解できていないと拙い接客となり、“この営業、大丈夫?”と思ったお客様はさらに不安が大きくなっていく。

数日後、“担当を変えて欲しい”と連絡が入ったことを上司から聞かされた。

「担当は変えない。やり方は任せる。」

上司のひとことは、責任から逃れるために担当を降りてしまいたいと思った私を強く刺激した。すぐさまお客様のもとに向かい、至らなかった点を謝罪した。

「私たちは家を買うのがはじめてだから、不安や心配があります。だから、営業のあなたが私たちを安心させてください。」

その時、はじめてお客様が私に求めていたものが何だったのか気付いた。


それからしばらくは、“不安を与えてはいけない”という気負いがあり、お客様との商談は常にプレッシャーを感じた。
そんな私でも、お客様は温かく迎えてくれた。

お客様に報いるため、わからないことは上司に何度も尋ねたり自分で調べたりして、自分の中で理解することに努めた。
執拗な私に上司は呆れたかもしれない。それでも自分が理解できてお客様にうまく説明できると拙さは次第に薄れ、なんとか契約を結ぶことができた。

「あなたでよかったです。」

引き渡しの時にお客様からいただいた感謝の言葉は、嬉しさより驚きの方がはるかに大きかった。
担当が変われば、すんなり契約はまとまっただろう。
迷惑をかけてしまった新人営業の私に成長する機会を与えてくれたのはお客様だ。

「こちらこそ、拙い営業で申し訳ございませんでした。」

そう感謝を伝えるのが精一杯だった。


引き渡し後も電話したりご自宅に伺ったり、お客様との交流が続いていた。
そんなある日、お客様の新居に魅了された同僚女性を奥様から紹介いただいた。
お客様からの知人紹介は、お客様と営業の信頼関係がうまく構築できた結果であり、とても嬉しかった。

しかし、紹介されたお客様は新居への憧れが強く、希望の物件はなかなか見つからず時間ばかりが過ぎてしまった。

「物件探しに時間がかかりすぎるのは営業に責任があるんだよ。」

先輩からそう指摘され自覚もしていたが、なぜ見つからないのか原因がわからず現状を打破できずに1年を経過してようやく契約にたどり着けた。

契約が結ばれた夜、お客様に了承を得て紹介者である奥様に連絡をした。
ご紹介者の成約という報告をきっと喜んでくれると思ったが、そうではなく、とても驚いていた。

「見つからないと諦めかけていたのよ。彼女たち『1年も物件を見ると、どれがいいのかわからない』って悩んでいました。探し疲れ?それもあったみたい。」

物件が見つからないのではなく選べなかったのだ。
物件探しに時間がかかりすぎたのは、すべてをお客様に委ね決断しやすい提案ができなかった私に原因があった。
それを反省していた時、不意打ちのように期待していた言葉が耳に入ってきた。

「よかったですね。おめでとうございます。」

安心したのか、なぜか胸がジーンと熱くなっていた。


営業を育ててくれるのはお客様

いろいろ迷惑を掛けてしまったこのお客様には、自分が理解することや状況を察することなど営業として成長する機会を与えてもらった。

わからないことに気付けない新人営業の私を育ててくれたのはお客様であり、信頼関係がとても大事なこともお客様から教えてもらった。