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2019-04-04 15:03:20
【泣ける住宅購入】息子家族のため、自分のための
息子さん家族が住むための物件を見学する年配女性。
息子さん家族のため?自分のため? 誰よりも思いの強かったお客様と出会った新人営業のお話 「おうちのなか、見れるの?」 建築途中の現場に、年配の女性が現れた。貼り掛けの外壁が家の外観を形作った程度で、その内部は柱と梁などが確認できるだけの状態だ。年配の女性は基礎を跨ぐたびに「よいしょ」と声を出し、私のスマホの明かりだけを頼りに見学した。 「息子たちに住んで欲しいのよ。」 その物件のすぐ裏に住んでいるという年配の女性は、徒歩10分のマンションに住む息子さん家族を“より近くに・・・”と願っていた。 「息子たち連れてこようかしら。今日は何時までいるの?」 来てくれたらラッキーくらいのつもりで18時までは待機していることを伝えると、その年配の女性は帰っていった。 (あぁ、またこのパターンか・・・。) 近くに団地があり同じ考えを持ったご高齢の見学者を私は何度も応対していた現場だった。しかし、やはりというべきか、その後にそれらしき見学者が現れることはなかった。 翌日の現地販売では数組の来場客があったものの“いいですね”や“欲しいなぁ”といった大雑把な感想ばかりで、アンケート用紙の回収もできない“見たいだけの来場客”が続いた。 西に日が傾き始めた頃、前日見学した年配の女性と午前中に見学した家族がチラチラとこちらに視線を向けながら道端で立ち話をしていた。お母様と息子さん家族だとそこで気付いた。私は歩みを進めてご家族の会話に加わり、そこでお客様の生の声を理解した。木材の露出した建築途中の物件を見学しても何もイメージできない。見たいだけの来場客と思っていた中には、質問が浮かばず“いいですね”や“欲しいなぁ”といった感想になってしまう人がいることをその時に知った。 「内装を確認できる完成物件が近くにあります。見学してみませんか?よろしかったら声をお掛けください。」 あと2~3時間はこの場にいることを伝えて私は持ち場に戻った。そして、その輪がお母様の自宅へと向かう様子を少し離れて見届けた。 それから数時間後、お母様と息子さん家族が再びやってきた。 「これから見れます?」 私が紹介した完成物件は、これから外食するというご家族が週末によく利用しているレストランの近所にあり、早速見学に向かった。 家具が配置された同じ売主の完成物件での見学は、非常にイメージがつきやすかったのだろう。間取り・広さ・階段・設備などに具体的な細かい質問が寄せられた。購入への意欲が感じられた私は、優れた点ばかりだけでなく、利用者が補うべき注意点も漏らさずに説明した。その説明に一番大きな反応を示したのは、お母様だった。私の説明に合いの手を打つように“そうなの?”“いいわね!”と声をあげ、息子さん家族の購入意欲を後押しした。 「あとは金額次第かなぁ・・・。」 息子さんの言葉は購入へ前向きな意思を示し、この時に初めてアンケート用紙の記入に応じてもらえた。 「連絡先は、母さんの携帯でいいよ。」 教えられた連絡先は、最初に物件を見学したお母様のものだった。お母様は断ることなく「私から連絡すればいいもんね」と、むしろ喜んで引き受けた。息子さん家族が今よりも近い場所に移り住むことが現実味を帯びてきたからだった。 数日後、資金的な話を聞きたいとお母様から連絡が入り、私と店長はお母様の自宅を訪れた。土曜日だったが息子さんは仕事のために不在で、お嫁さんだけがいらっしゃった。 息子さん家族はローンを完済したマンションに住んでいた。それを貸し出し、賃貸収入を新居の住宅ローンに充てる資金計画は負担が最も小さくなると判明した。 店長から資金計画の説明を受けて納得した様子のお嫁さんは、携帯電話を取り出すと仕事中のご主人に電話を入れ、想像よりも負担が小さい資金計画を嬉しそうに伝えた。 「うん、わかった。そうするね。じゃあ、仕事頑張って。」 電話を切ったお嫁さんはご主人の意向を私たちに伝えた。 「決めました。買います!」 その日は資金計画の話だけと思っていた私と店長にとって、思いもよらぬ嬉しいハプニングだった。でも、そのハプニングを誰よりも喜んだのは、お嫁さんの横で満面の笑みを浮かべたお母様に違いない。 息子家族のための用意 購入を決意したものの、正式な申し込みには売主への支度金が必要だ。しかし、土曜日に金融機関の窓口は開いていない。 「今用意できるのは、せいぜい・・・。」 お嫁さんが口にした金額は、支度金としては十分なものではなかった。が、次の瞬間、お母様が動いた。 「これで足りるかな?」 お母様はタンスから銀行のロゴが入った封筒を取り出すとお嫁さんに手渡した。 「一度決めたらこういうのは早くしないとね。」 やはり新居への思いが一番強いのは、紛れもなく息子さん家族を待つお母様だった。 |