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2019-05-11 17:26:18
【泣ける住宅購入】自分の人生にも大きく関わった初契約
あっ!!街中で繰り返す驚き。
偶然以上の運命を互いに感じ、心の距離を近づけたお客様と新人営業のお話 スポーティな装いのご夫婦が現地販売会場にやってきた。炎天下、同じ職場の仲間とサッカーを楽しんできたというから健康的だ。 「広い。駅も近いし。いいと思わない?」 ご主人に話し掛ける奥様の目利きは正しかった。十分な広さ、ゆったりした間取り、駅からの近さは、このエリアでは抜群の好条件。8棟あった物件は販売開始から数週間で残り1棟に。そんな人気物件を入社後間もない新人の私が担当になった。 「人気ありますので、早めの申し込みをお願いします。」 連絡先が記入されたアンケート用紙を受け取る時に伝えると、2・3日中には結論を出すと言いご夫婦は去っていった。 蝉の声も聞こえないほどのうだる暑さ。ご夫婦が去ってから小一時間後、私は涼を求めて近所のコンビニへ向かった。買い物を済ませ冷房の効いたコンビニを出るとムッとする暑さに全身が覆われ、販売物件へ重い足を運び始めた時だった。 「あっ!?」 先ほど見学したご夫婦が私の目の前に立っていた。軽く言葉を交わしただけだったが、この偶然の再会に私は何かを感じた。 その日、回収できたアンケートは1組分だけ。後片付けを済ませ、駅へと向かっていた時だった。 「あっ!!」 またご夫婦に再会した。ご丁寧にわざわざ自転車から降りたご夫婦は、驚きを隠すことなく私に近寄ってきた。 「えーっ、こんな偶然あるんですね!!」 奥様の声は、通り過ぎる人が“何かあったの?”とこちらに顔を向けるほど大きなものだった。偶然の再会は私にとっても周りの目など気にならない衝撃だった。 「偶然が重なれば、運命かもしれませんね。」 私は冗談っぽく声をかけた。今度はご夫婦も私と同じことを思っただろう。その翌日、始業と同時にご主人から電話が入り、ご夫婦は昼前に来店された。そして、今後のスケジュールや資金計画を確認すると申し込み書類にサインを入れた。 契約日の前夜、ご主人から電話が入った。 「本当に申し訳ありません。」 申し込み物件のキャンセルだった。 申し込みを終えた日の夜、最初に口を開いたのはご主人だったという。趣味や遊興だけでなく日々の生活費といったそれまでの生活水準を変えたくなかった慎重なご主人と、夢のマイホームのためならば多少の我慢もいとわない奥様は熟考を重ねた。ときには夫婦喧嘩になりかけたこともあったらしい。それでも新居の購入を諦めるのではなく、身の丈にあった物件を探し直そうとご夫婦の意見がまとまり契約前夜に電話をしてきた。 その翌日、ご夫婦はお詫びのために朝一番に来店され、経緯をすべて話してくれた。 「キャンセル・・・わかりました。その代わり次の物件も私に提案させてください!」 ご夫婦の考えを尊重した私は、そんな言葉を掛けることしかできなかった。 「本当にすみません。今後ともよろしくお願いします。」 そう言うと姿勢を正したご夫婦は頭を下げようとした。が、さすがに止めさせていただいた。初契約は流れてしまったが、偶然を繰り返したご夫婦との縁を繋ぎ止められただけで十分だった。 新しい物件探しは難航した。希望エリアの新築一戸建ての物件情報が乏しかったからだ。エリアや広さなど少し条件から外れてしまう物件でも私はご夫婦に提案し続けたが、やはり決定打に欠けていた。 「どの物件にしても、あなたと契約しますから。」 見学帰りの車の中、ご主人から声を掛けられるたびに虚しく響いた。 ある日、お客様から物件の提案があった。 「ネットでいい物件を見つけたんですけど扱えますか?」 私を信用頼してくれたこの言葉は本当に嬉しかったが、その物件は他の仲介業者が販売しており私が扱える物件ではなかった。すべての経緯を知る上司が動くと事態は変わった。売主様と親交のある上司の尽力で、幸運にも特例で扱わせていただけることになり、すぐにお客様を連れて見学に向かった。 「無理させちゃいましたよね?」 ご主人の気遣いが嬉しかった。 お互いの人生に関わる出会い 後日、お客様が見つけ出した物件は私の初契約となった。そして、契約後の売主様や施工会社との打ち合わせにお客様を送迎する機会が増えた。片道1時間の車の中の会話は、自然の流れでプライベートな話題になることもあった。 「彼女にプロポーズしようと思っているんです。」 私の“恋バナ”にテンションが上がったのは奥様だった。ご主人も会話に加わり自分たちの経験談とアドバイスを後部座席から送ってくれた。すると突然、ご主人が思わぬことを口にした。 「今から、婚姻届を取りに行きましょう!」 予想外の展開だったが、言われるがまま私は区役所へと車を走らせた。 三度出会ったあの日の偶然が、お互いの人生に大きく関わる出会いになるとは思ってもいなかった。今では偶然ではなく、運命に導かれた出会いなんだと思っている。 |