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2017-10-02 19:49:48
ドライブデートの途中に立ち寄ったカップル
新居を探しているとは思えないファッションに誰もがそう見えてしまう。
見た目で判断されてきたお客様と見た目で判断しなかった営業のお話です。




8月の現地見学会でのこと。黒くて大きなアメリカ車に乗った二人組がふらっとやってきた。

「見れる?」

ぶっきらぼうに尋ねてきた男性の出で立ちは、タンクトップにショートパンツ。全身真っ黒に日焼けしてサングラス。
今でいうオラオラ系だ。いっしょにいる20代と思わしき女性もなかなか個性的なファッションだ。

誰がどう見てもドライブデートの途中に立ち寄ったカップルであり、夫婦ではないことが雰囲気でわかる。
そんなふたりを見た目で判断すれば、お客様となる可能性は“ゼロ”だ。でも、それは私のモットーとは異なる。
見た目には惑わされず、いつもと変わらない接客を心がけた。


カップルを物件の中に案内するとふたりの表情は一変する。楽しそうではあるが浮ついた会話ではなく、物件を見ている眼差しは真剣そのものだった。

聞けば、もう半年くらいドライブ中に気になる物件があると見学しているという。お互いに結婚の話もしているが、きっかけがわからずに一歩前に踏み出せないという。
そんなことまで聞かせてくれたので、私の結婚したきっかけなどを話すとカップルは耳を傾けてくれた。

その男性がひとりになった時にさりげなく尋ねてみると、新居の購入を結婚のきっかけにしたいという。
いっしょに来場した彼女とは少し年齢差があり、新居を購入することで彼女のご両親を安心させたいと考えていることまで話してくれた。

結局、その物件は希望の条件と離れているということで進展することはなかった。

「あんたに知り合えてよかったよ。また、よろしく。」

そう言って、カップルは大きな車で去っていった。


秋も深くなった11月のある日。その男性から電話が入った。それまでの約3ヶ月、何度か物件について電話で話すことはあったが、物件資料を求められたり案内したりすることもなかった。
だが、いつもの電話とは違って、いきなり本題から切り出してきた。

「おたくが紹介してくれた物件じゃないけど、扱える?」

それは他社が管理する物件だった。男性から伝えられた連絡先は、覚えのあるものだった。そこは直販物件を扱う不動産業社だ。
仲介が入り込めるか疑問だったが、ひとまず物件を確認するために電話をすることにした。

「当社の物件は直接販売だけであり、他社が仲介に入ることは無理です。」

そんな感じの返答だった。そもそも、その物件の見学会でお客様を担当した営業がおり、そこに他社の営業が仲介するのは道義に反しているではないかという。全くごもっともな話である。

そのことを男性に伝えると「わかった。」とひとこと言って電話を切った。しかし、数分後にその男性は再び電話をしてきた。

「向こうの会社と話ついたから。向こうの担当に電話して。」

少し強引な話だが、その男性は“ハウスプラザの私から気に入った物件を買いたい”と直接販売の不動産会社を押し切り、話をつけてくれていた。

どうやら、自分を客として接してこない不動産会社の営業担当が気に食わなかったので、その営業担当から直接買いたくない。
決して安くはない仲介料を私に払ってでも、きちんと向き合ってくれた私から気に入った物件を手に入れたいということだった。


その男性は、小さな貿易会社ではあるが営業・仕入れ・資金計画をひとりでこなす立派な会社員だった。
もちろん収入も信用もあり住宅ローンの審査も難なく通過するなど、契約から引き渡しまで問題が起こることはなかった。

「ちゃんと客として扱ってくれただろ。それに報いたかっただけだよ。」

物件申込書を記入しながらそう語った男性の人情深さは、そこで終わることはなかった。
物件の購入をきっかけに結婚したという奥様の妹さん夫婦が新居を探していると知れば、その男性は私を紹介してくれて契約することができた。知人や友人を紹介してくれたこともある。

今でも夫婦仲良くドライブデートしている。その途中に、現地見学会の私を見かけるたびに大きな声で呼びかけてくれる。

「元気してる?今度、友達連れてくるからよろしく頼むよ。」


蔑んだ目で見る営業もいた

どんなに真剣に物件を探していても見た目で判断されてしまい、まともな商談にならなかった。どこか蔑んだ目で見ている・・・そんな印象の営業ばかりだったという。
そんな中で、お客様として真摯に応対したのは私だけだったらしい。

“人は見た目が9割”ともいうが、外見や身なりでお客様を判断しないという私なりのモットーが間違っていないことを証明してくれたお客様だった。

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