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2017-08-28 12:15:40
物件を探し続け、冴えない表情のまま契約した“お客様”。
どうして?と問いたくなる、本質に触れなかったのはなぜか。 他とは違う自分のスタイルを貫いた営業のお話です。 出会ったのは、現地見学会。ハウスプラザの看板であることを確認してやってきたらしい。 長く物件を探しているというだけあって、間取りや設備にも詳しい。 私の名刺に記された宅建資格や他の資格についてまで質問が及ぶ。 とにかく、物件購入への熱意を感じた。それがお客様の第一印象だ。 「あっ、そのお客さんですか・・・」 店に戻ると同僚の営業が、のちに“お客様”となるその方の接客経験について話しはじめた。 “今まで何人もの営業が接触しており、申し込みの段階になると色々言い訳をしてははぐらかされる。買う気のない冷やかしなんかじゃないかな。” まとめるとこんな感じだ。でも、私の中には同僚とまったく違う印象と、なによりも手応えに自信があった。 (時間を割いてまで現地見学会に来ている。買う気があるに違いない!) そう思うと同時に、お客様をそう見ている同僚を見返してやりたいという私なりの意地やプライドもあった。 同僚からのアドバイスに対して「見返してやりたい」と思う私は、どこか他の営業とは違っている。 “お客様”の定義もそのひとつだ。契約してからが私の“お客様”であり、それまでは“興味ある人”という定義だ。 得体の知れないテーマパーク(物件)があったとする。そのテーマパークに興味ある人に対して設備や魅力を説明しながらチケット売り場まで導くのが営業の仕事である。 その説明に納得し、チケット購入(契約)してくれた人がお客様。そこではないと判断すれば、他の興味あるテーマパークを紹介する営業が続く。 もちろん手を抜いたりしない。 入場ゲートで「いってらっしゃい」と見送るだけでなく、入場したお客様が望めばテーマパークに出向きいっしょに過ごすこともある。 私の中の“お客様”の定義はこんな感じだ。 その後、先入観にとらわれずにいつものようにその“興味ある人”に接した。 物件を見る目は確かだし、条件も相場から外れていない。具体的な資金計画もしっかりしている。 また営業として、何ひとつ手を抜かず用意周到にすべてを進めてきた。 それなのに、進展しそうで進展しない“興味ある人”との商談はもどかしく1ヶ月が経過した。 (やはり、興味だけなのか・・・) そう思いはじめた私は、その“興味ある人”が望む条件を満たした「これ以上のものはないだろう」という営業として最高の物件を探し出して商談に挑んだ。 しかし、いつものようにもどかしい商談で時間が過ぎていく。覚悟を持って切り出してみた。 「お客様の条件で、これ以上最適な物件はもうありません。」 ズバリ本音だ。それまでよりも少し強めの口調で話したことで、“興味ある人”の表情が少し揺らいだ。 さらに「これでダメなら、ずっと賃貸にお住まいになる方がいいです。」とまるで追い討ちをかけるような言葉がついつい口から出てしまい、自分でもビックリした。でも、それも本音だ。 少しの沈黙が続いた後に、“興味ある人”の重い口がようやく開く。 「うん・・・、わかったよ・・・」 観念したかのようなその言葉に引っ掛かるものを感じたが、“興味ある人”の決断を導き出し、お申込み手続きを済ませるところまでたどり着いた。 それは、営業として私の見る目が間違っていなかった証だ。 そして、私にとって“興味ある人”から“お客様”に変わる瞬間である契約の日を迎えた。 物件契約書を目の前にした“興味ある人”の表情はいつもと同じように冴えない。 それでも、契約書をひとつひとつ確認していくとサインと押印を済ませ、私にとっての“お客様”となった。 「契約って、もっと嬉しいものだと思っていました。」 そう語った“お客様”は、表情を変えず契約書をじっと見つめている。 ただ、商談や物件への不満といったものではなく、自分の心に語りかけている表情に見えた。 ちょっと心に引っ掛かるものがありながらも、他のお客様と同じように入居後も連絡を入れていた。 ある日、「ちょっと水回りをいじりたいんですけど。」という問い合わせがあり、業者の紹介を機に“お客様”のご自宅に伺うことになった。 “お客様”の私生活での表情は、あの頃の“興味ある人”の表情とは違っていた。 笑みをこぼしたり、熱意ある説明をしたり、水回りのことで業者と話している“お客様”からはご自宅への愛情が感じられるようになっていた。 “お客様”から“興味ある人”をご紹介 「お酒、お好きなんですか?」 そんな何気ない会話がきっかけとなり、現在の関係はとても良好だ。以前のような冴えない表情を見ることもない。 「契約の時、どうしてあんな言葉を?」 そんなことは聞くだけ野暮。営業として、やるべきことはすべてやり、間違いもなかった。 だから、契約することができた。その事実があればいい。 そう信じて過去のことに触れることなく“お客様”と酒を飲みに行き、何気ない会話と時間を楽しめる関係になった。 そして今では、この“お客様”から“興味ある人”をご紹介いただいている。
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